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冬音 「NARUTO」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。

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可愛いんだよ、可愛すぎるんだ!


 玄関から転々と、衣服が落ちている。額当て、忍具の詰まったベスト、アンダー、鎖帷子、脚絆、クナイの入ったホルダー、ズボン、それを視線で辿れば、風呂場に黒のボクサーパンツが一枚落ちていて、濡れたバスタオルが脱衣カゴに放り込んである。風呂場から水滴の跡が寝室へと続いている。

「…ったく、頭くらい、ちゃんと拭けばいいのに」

何度、注意すれば解るんだ、あの馬鹿上忍は!…イルカは溜息を吐いて、玄関から拾い集めてきた衣類を仕分けて、洗濯機を回すと寝室へと向かう。敷きっぱなしだった布団の上にこんもりとした山がひとつ。銀色の毛先と色の白い足先が包まったタオルケットから見えた。疲れているのかこちらの気配に気づくことなく、カカシは熟睡しているようだ。それを見下ろし、イルカはまたひとつ溜息を吐く。
(…長期任務でお疲れなんだろうけど…。ってか、コレって、まっぱだよなぁ)
カカシの衣服を収めたタンスの引き出しが開いた形跡はない。多分、パンツも履いてないんだろう。ビンゴブックに載っちゃってる忍が油断しくさった顔でしかも、真っ裸で熟睡。…俺が刺客だったら、どうするんだろう?まっぱで戦うのか、それって、恥ずかしすぎ。

「…でも、まぁ…」

ここがカカシにとって、それだけ安心し、気を許し…許しすぎだけれども、無防備な姿を自分に晒しても構わないと思っているのは、正直、嬉しい。イルカは無意識に緩む顔を引き締めると、静かに寝かせてやろうと部屋を出る。襖を引く音にカカシがもぞりと身動ぎ、薄く目を開き、瞬くのをイルカは見やった。

「…いる、か、せんせ?」

舌っ足らずにカカシに名前を呼ばれて、イルカは微笑する。

「カカシさん、おかえりなさい。任務、お疲れ様でした」
「…ただいま。…いるかせんせ、も、おかえりなさい」
「ただいま」

へにゃりと嬉しそうに笑ったカカシの頭を無性に撫でてやりたくなって、イルカは寝室へと取って返すと、まだ湿り気の残るカカシの髪を梳きつつ、撫でてやる。それに、カカシは今にも喉を鳴らさんばかりに緩んだ顔をして、イルカに懐いてきた。
「ちゃんと、頭、拭いて、服、着てくださいね。風邪、引きますよ?」
いそいそと膝に乗りあげてきたカカシの頭を撫でつつ、イルカは小言を垂れる。その小言すら心地よいのか、カカシはうっとりとしている。
「…裸で、イルカセンセの匂いのするものに包まってるとね、安心するんです」
さらりと、とすっとイルカの胸をきゅんと撃ちぬくような台詞をカカシは舌に乗せる。それにかーっとイルカの頬は赤く染まった。
「イルカセンセにぎゅってしてもらってるなーって」
へにゃりへにゃりと酒が入った時のようなカカシのふわりふわりと浮いた言葉に、イルカはクラクラする。
(何、この上忍、チョー、可愛いんですけど!!)
思わずアカデミーの女子生徒のような口調になってしまう。…こんなに、三十路の、年上の自分よりもデカい男を可愛いと思う日が来るなんて思いもしなかった。
「…いくらでも、ぎゅってしてあげますよ」
「…ホント?」
体を起こしてきたカカシの肩をタオルケットが滑る。カカシの白い肌が露わになり、イルカは目の遣り場に困る。カカシの体は三十路とは思えないほど、無駄のない筋肉質なイイ体をしている。女が(男も)こぞってその体に跨りたがるような、それはもうエロい体をしていた。そのエロい体に散々、エロいことしたり、されたりしている訳で、裸で向かい合うような状況はまあ、布団でナニする場合しかないので落ち着かない気持ちになるが、カカシはイルカの動揺を知るでもなく、イルカにぎゅっとしてもらおうと抱き着いてきた。遠慮もなしに、全力で甘えてくるその体を受け止め切れず、イルカはこてんと後ろに引っくり返るが、頭に差し込まれたカカシの手のお陰で殴打せずに済んだ。
「…本物がやっぱり、いちばん…」
イルカの胸に頭を預け、うっとりと目を閉じたカカシから聴こえてきたのは寝息。イルカは溜息を吐いて、ずり下がったタオルケットを引き上げ、カカシの肩まで引き上げる。

「可愛すぎる…」

カカシのだらしなく安心しきった寝顔に、イルカは感嘆し、吐息を漏らす。その吐息は夕暮れに染まる部屋に淡く溶けて消えた。


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