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「NARUTO」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。
20 . May
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13 . June
 
 
「…腹、減った…」
 
近隣の村を荒らしていた盗賊の征伐を終え、疲れ果てた体を引きずって、カカシは里近くまで戻ってきた。…が、他里の抜け忍に途中遭遇した。その抜け忍がカカシを追手と勘違いして死に物狂いで襲いかかってきた為、仕方なしに写輪眼を使った。どうにかこうにか抜け忍を仕留めたところで、カカシは動けなくなった。チャクラもほぼ底をついた。僅かに残ったチャクラで式を作り、後輩に送って、木の上で迎えが来るのを待ちつつ、ぼーっとしていたら、黒い尻尾がぴょこぴょこやってくるのが見えた。
(敵!?)
と、思わず身構えれば、それは実にのんきな木ノ葉の若い忍びで、カカシの気配に気づくこともなく目の前の小川で手を濯ぎ、顔を洗い、ほうっと息を吐いて、よりによって、カカシの休む木の真下で弁当を広げ始めた。
(…おいおい、油断し過ぎじゃないの?)
そう思いつつも、美味そうにおにぎりに齧り付く、子犬のようなまだ幼さの残る少年の手元にカカシの目は釘付けになった。
(…おいしそう…)
カカシはここ数ヶ月、任地から任地へと、里に戻る暇もなく任務を言い渡され、身を粉にして働いていた。まともな食事を摂ったのは、半年前の焼き魚定食が最後だ。後は良くて味気ない乾パンか、干し肉か、仕留めた獣の肉か、兵糧丸か、凡そまともな食料は口にしていない。カラカラに乾いていた口内にじんわりと唾液が溜まる。
(…食べたい…)
少年の食らう握り飯が。…ぎゅるると気が緩んだ所為か腹が鳴り、しまったと思ったときにはカカシは樹の下へ転げ落ちていた。とんだ失態だ。挙句、盛大な腹の音を少年に訊かれてしまった。カカシは穴があったら入りたい気持ちになった。そんなカカシの気持ちを知ってか知らずか少年は恐恐と口を開いた。
「…あ、あの、お腹、空いてるんですか?」
その言葉に、暫し、カカシは逡巡したが、その通りなので首を縦に振った。
「…えーと、良かったら握り飯、食べますか?」
少年の言葉に驚く。どうみても暗部、ちょっと返り血付いちゃってる胡散臭いだろう自分に、ぎこちなく少年は笑って、手にしていた竹皮で包まれた握り飯をカカシへと差し出してきた。
「毒は入ってないです。ただの握り飯です。どうぞ?」
毒は入っているはずがない。自分が食べるものに毒を仕込むバカはいない。こののほほんとひとの良さそうな少年が自分に害をなす気なんてないだろう。
(…腹、減った…)
殆ど無意識に手が動いて、握り飯を掴む。空いた左手で面を僅かにずらせば、少年は慌ててぎゅっと目を瞑った。
(別に見られても困らないんだけど、ま、いっか)
写輪眼を使うときは面をずらすので、すでに顔は他国のビンゴブックに載っていて、面など付けていても殆ど意味などないのだが、顔を見せてはならないのは掟なので仕方がない。カカシは久しぶりのまともな食料に齧り付いた。
(…おいしー…)
思わず涙が出そうになるほどに美味い。程よい塩加減におかかから染みた醤油の味が舌に懐かしい。空きっ腹にしみじみ、沁みた。
「…お茶、飲みますか?」
少年が目を瞑ったまま、竹筒の水筒を差し出した。カカシは水筒を促されるまま受け取る。
(…ああ、生きてて良かった…)
ここで死んだら楽になれると、何度も思ってきたけれど、この握り飯のために自分は生き残ったのだと思う。
「良かったら、これもどうぞ」
少年の言葉に有難く、カカシは最後の握り飯(具は焼き鮭だった)を腹に収めた。食べたら、少しだが、体に力が戻り、チャクラも僅かだが回復した気がする。カカシはぎゅっと目を瞑ったままの少年を見やる。少年は命の恩人だ。何か、お礼をしないと…と、思ったが、生憎、何も持ちあわせていない。礼は改めよう。…遠くに自分を迎えに来た後輩の気配を感じて、カカシは地を蹴った。
 
「…ゴチソウ、サマ…」
 
せめてと思い、感謝を言葉にする。カタコトになってしまった微かなくぐもった声に少年が目を開ける。そこにカカシの姿はすでになく、空っぽになった水筒がその場にぽつんとあるだけだった。
「…はー、びっくりしたー…」
緊張を緩めた少年がほうっと息を吐くのを真上から、カカシは見下ろす。
「…余程、お腹、空いてたんだな。あの暗部さん…」
少年のひとりごとは何だか嬉しそうで、里に戻るべく、森から大門に続く道へと戻っていく少年の後ろ姿をひっそりとカカシは見送った。
 
 
 
 
 
 
 
 
 握り飯のお礼にと、救援に来た後輩を使って、落ちてた栗を拾わせた。途中、立派な舞茸も発見したので、それも収穫した。後輩は「先輩は人使いが荒い。何なんですか!」と文句を言ったが、カカシは視線一つでそれを黙らせた。暗部の実力主義の縦社会は厳しいのだ。
 
 少年を見つけだすのに苦労するかと思ったが、報告をしに行った火影の執務室から、運良く少年が出てきた。カカシは報告は後回しにして、少年を尾行することにした。
 商店街で買い物をし、少年がボロいアパートの角部屋に入っていくのをカカシは見送って、手にした袋をどうしようかと悩む。悩んで、怖がらせてしまうかもしれないと思ったが、どうしてももう一度、少年の顔を見たかったので、いつもは完全に殺している気配をだだ漏らしにして気づいてもらおうと窓の外で、粘る。気配に気づき、窓を開けた少年を、訪ね方が悪かったのか、腰を抜かさんばかりに驚かせてしまった。それに、しまったと思ったが今更、帰れない。怯える少年にカカシは手にしていた袋を付きだした。それを少年は恐る恐る受け取って、中身を見ると驚いた顔をして、それから、にっこりと笑った。その顔に、カカシの胸はキュンと音を立て、窮地に陥ったときだって、ぴくりとも反応しない心臓の鼓動が早くなっていくのを感じた。そして何だか、毒を食らったわけでもないのに心臓が痛い。その痛みはすぐに治まって、カカシはほっとしたが、何がどうなって、何がどうしてか、カカシは少年と一緒に秋刀魚一尾を半分に分けあう夕飯を共にし、明日の夕飯も一緒に食べる約束をしてしまっていた。
 
 握り飯のお礼を言いたかっただけだったのに何で、こんなことになったんだろう?

考えるが解らない。目の前に並んだ料理は湯気を立て、カカシの食欲をそそった。
 
「舞茸はきんぴらと秋鮭と厚揚げと炒めたものと、お吸い物にしてみたんですけど、味はどうですか?」
「…おいしい、デス…」
「良かったぁ!あ、おかわり、まだありますよ。いっぱい、食べてくださいね!」
「…はい」
 
少年は警戒心ゼロに無邪気にカカシの言葉を喜ぶ。キラキラ、浮かべる笑顔が眩しい。うっかり、その笑顔を「かわいい」などと思い始めている自分がいる。そして、この少年の作る飯が、今まで食べたどの料理よりも美味い。着実に餌付けされているような、少年のニコニコと無邪気に嬉しそうな笑顔にコロリと既にやられてしまった気分になりつつ、夕飯を食べ終わってしまった。そろそろ、次のツーマンセル任務の集合時間が迫って来ているのに、居心地が良くて、もうこれで終わりかと思うとどうにも立ち去りがたい。
「暗部さん、お茶、どうぞ」
そんなカカシの気持ちを知らず、少年はご機嫌だ。カカシは心配になる。「こんな顔も見せない、名前も知らない、しかも、暗部をホイホイ、家に上げちゃダメでしょ!」…と、少年に説教したくなるが、言ってしまうともう二度と、来れなくなる気がして、言い出せない。カカシは心中、ひっそりと溜息を吐いた。
「暗部さん、明日も来てくれますか?大家さんから、かぼちゃをもらったんです」
少年はカカシの心中など察する由もない。カカシは四方を敵に囲まれたときよりも、その返事に困った。
(俺、皆から恐れられてる暗部、写輪眼のカカシなのよ?フレンドリー過ぎるでしょ!?もっと、警戒心持ちなさいよ!忍でしょー!!)
内なるカカシは言うが、表のカカシは声に出せない。
「…かぼちゃ、嫌いですか?」
眉を下げた少年に慌てて、カカシは首を振った。
「良かった。明日はかぼちゃの味噌汁とかぼちゃのそぼろ煮にしますね」
にこにこ笑う少年は実に楽しそうで、カカシは断りきれずにコクリとまた首を縦に振っていた。
 
 
 
 
 

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