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冬音 「NARUTO」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。

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考えるだけ、きっと無駄。




 教え子を介して知り合った雲の上の上忍様に頻繁に食事やら酒やら、誘われるようになり、あまりの頻度に三回に二回は断るようになった。たまに奢られるぐらいなら気安く応じられるのだが、「俺が誘ったんですから」と、お会計はすべて上忍様持ち。それを素直に喜んで応じられる性分なら良かったのだが、イルカの生真面目で人を気遣う、大丈夫だと思うものの上忍様の懐具合をつい心配してしまう性分が、かつ自分の男としての挟持がそれを許さなかった。女じゃあるまいし、気安く奢られてばかりなのは些か体裁が悪く、集ってないのに集っているようで、容易く容認できない。いくら薄給の中忍だからとは言え、ちゃんと収入はあるのだから、(寂しい懐は痛むけれど)せめて割り勘にして欲しいのだが、頑として上忍様は差し出すお金を受け取ってくれない。周りに上忍様に集っていると思われるのも嫌だし、何やら体の関係のない援助交際な感じがして断るようになったのだが、断ると上忍様は露骨にがっかりした顔をして、寂しそうに悲しそうに肩を落とす。それを見る度に、残業だ何だかんだと理由をつけて断っている自分に罪悪感が湧いた。そして、考えた末に辿り着いたのが、自宅に上忍様をお招きし、口に合うかは解らないが、手料理と酒を出そう。これなら、自分の気が済む。…と、始まった宅飲みはいつの間にやら常習化し、上忍様は任務のない日は毎日のように、酒だ、肴だ、高い肉だと土産を携え、いそいそとイルカ宅を訪れる通い妻状態(料理を作るのはイルカである)になっていた。そして、気がつけば上忍様の私物が少しづつ増え、上忍様専用の箸やら茶碗、布団、いかがわしい本数冊にウッキー君と書かれた植木鉢がイルカの狭い部屋の一角を占め、元からこの部屋の住人のような顔をして、擦り切れた畳の上にごろりと転がった上忍様は飽きもせずにいかがわしい見慣れた表紙の本のページを捲っていた。

 何故、こうなった?

 イルカは思うが、慣れてしまえばどうってことない。毎日、酒を飲み、飯を食うようになってから、上忍様はイルカの中で客ではなくなった。かと言って、気安い友人でもない、なんと言うか、餌付けしたら懐いてしまった猫だ。猫だって面倒見てやれば、恩義を感じて、鳥やら鼠やら、飼い主に手土産携えて帰ってくるのだから、それと似たような感じだ。だが、この猫、ちゃんとした自宅があるはずなのだが、そちらに帰らなくていいのかとイルカは思う。
「カカシさん、ウチに入り浸って大丈夫なんですか?」
「…んー?」
本から顔を上げたカカシがイルカを見やる。額当ても口布も取り去ったその顔は驚くほどに整った端正な顔をしている。普段は隠されたその顔をイルカの前では惜しげも無く、カカシは晒してくる。その顔にどぎまぎしていたのは知り合って、最初の一ヶ月の間ぐらいだろうか…、カカシが部屋に入り浸るようになってからは流石に見慣れて、その美貌も有り難みが薄れてしまっていた。
「…ん。大丈夫。あっちは殆ど、寝に帰るような家だし」
カカシは本を閉じると、起き上がった。
「ウチはセカンドハウスですか」
確か設備の整った上忍用のワンルームにカカシは居住していたはずだ。それに比べ、ここは中忍用の安普請のボロアパートだ。居心地は前者の方がはるかにいいに決まっている。
「セカンドは向こう。本宅はこっち…なのかね。…帰ってきてさ、「ただいま」って言ったら、「お帰り」って言ってくれるじゃない、イルカ先生。あっちは帰っても、俺一人だけだし、何か、寂しくって」
「…そうですか」
「うん。ゴメンね?何か、イルカ先生が人が良いのに浸け込んで、転がり込んじゃって」
自覚はあったらしい。眉をハの字に下げたカカシにイルカは冷めた茶を啜った。
「…嫌なら、言ってくださいね。俺、言われないと先生にずっと甘えちゃうと思うから」
窺うようにカカシは訊いてくる。…が、別にイルカは迷惑だとは思っていない。イルカの帰りを待たずとも、待つのが嫌なら自分の家に帰ればいいし、それこそ鍵なんかなくても部屋に入ることなど、カカシにとっては容易いだろうに、部屋の前で何時間も律儀にイルカを待っているカカシに情ならとっくに湧いてしまっている。嫌なら、とっくの昔にそうだと言っているのに、言えずにいるのはなんと言うか、いつもは自分一人な家に誰かがいるのがイルカも嬉しいのだ。
「嫌なときはちゃんと、そう言いますから、ま、居たいだけ居ればいいですよ。…でも、」
「…でも?」
でも、最近、変な噂を耳にしてしまったのだ。それをカカシが知っているのか知らないのかは解らないが、言っておいた方がいいだろう。
「でもって言うか、あのですね」
「はい」
「カカシさん、俺の家に殆ど、棲んでるじゃないですか」
「そうですネ」
「…何というか、変な勘ぐりをする奴もいまして」
「変?」
「カカシさんがウチを出入りするのを見た奴が、カカシさんと俺がデキてるとか言い始めたらしくて。今日、同僚に俺も訊かれて、びっくりして、そんなことないって否定しましたけど」
本当にデキてないし、清い知人以上友人未満なお付き合いだし…。何でか、半同居状態だけど。…と、イルカは思う。
「カカシさん、男前だし、上忍だし、お付き合いしている女性のひとりやふたり、居らっしゃるでしょう。こんな馬鹿な噂が彼女の耳に入ったら大変だと思って…」
「彼女はいませんヨ」
「え、そうなんですか?」
「居たら、来ないでしょ」
「…はぁ。まぁ、そうですよね」
「ウン。そう」
「でも、これから出来るかもしれないですよね?」
「彼女が出来る予定はないよ。恋人は出来る予定だけど」
彼女が出来る予定はないって言ってるのに、恋人は出来るって、何だ?…イルカは首を傾けた。
「恋人になる予定の方が居らっしゃるんだったら、こんな噂が立ったらマズいでしょう?」
「噂の当事者なので、大丈夫なんじゃないですかねぇ」
他人事のようにカカシが言う。
「当事者?」
意味が解らない。
「イルカ先生は当事者ですよね?」
カカシに訊かれて、イルカは頷きかけて、目を見開いた。
「…あの、カカシさん、恋人になる予定のひとって、誰なんですか?」
そして、思い切って尋ねる。
「エ?イルカ先生ですけど」
当たり前のようにそう言われて、イルカは目眩を覚える。そんなの、全然、まったく訊いてない。
「俺、カカシさんのこ、恋人になる予定、何ですか?」
恋人という単語に思わず吃ってしまった。イルカはカカシを窺う。カカシはにっこりと笑った。
「はい」
語尾にハートマークが付いたような甘い返事にイルカは眉間に皺を寄せた。
「俺はないですよ?」
そんなの寝耳に水だ。
「…ないんですか?」
ジリっといつの間にか距離を詰めてきたカカシにイルカは顎を引く。
「…ってか、俺、カカシさんに告白してもいないし、されてもいないですよね?」
「そうですね。…告白の前に外堀を埋めようかと思って。…思いの外、上手く行きすぎちゃって心配になったくらいですけど」
「外堀って」
まさか、頻繁な酒と飯のお誘いは前哨戦だったのか?…そして、俺はまんまと敵を本丸に入れてしまったことになるのか?
「イルカ先生が好きです。俺と一緒に住んでください」
ぎゅっと手を握られ、真剣な眼差しで見つめられる。…イケメンってヤツは得だよな。その美貌にクラっと来そう。でも、カカシさんは男なんだよな。…と思って、イルカはぶんぶんと首を振った。今はそんなことを考えている場合ではなかった。
「…もう、一緒に住んでるみたいなもんじゃないですか」
「そうですけど。俺はイルカ先生とキスとかエッチなこともしたりしたいんですよ」
「……エッチって、アンタ…」
思わず敬語が取れる。イルカはマジマジとカカシを見つめた。
「…あの、俺、男ですよ?カカシさんと同じモノが付いてるんですけど」
「大丈夫です。イルカ先生なら、俺、抱けます!」
自信満々にカカシに言い切られ、眩暈がする。…抱けますってことは、俺が女役なのか…。益々、眩暈がする。
「…俺、男のひとは…」
やはり、ここは常識に沿って男女交際をすべきではなかろうか。イルカは思う。
「俺のこと、嫌いですか?」
じっとカカシに見つめられ、イルカは焦る。この顔、ヤバい。…って言うか、カカシの顔は面食いのイルカのドンピシャ好みだった。見慣れたとは言え、未だに至近距離で見つめられたりするとドキドキする。
「…嫌いなら、一緒にいません」
とどの詰まりはそう言うことで。…考えるだけ、きっと無駄なことなのだ。
「じゃあ、好キ?」
アカデミーの色気づいた女子生徒と同じ仕草で、カカシは握った手を口元まで上げ、小首を傾げる。ちょっと可愛い。…だけど、それをあっさり認めるのも何だか癪に障る。
「…多分」
「エー、多分って何よ?好きって言ってヨ」
「人を謀るひとには言ってあげません。…ってか、明日、早朝出発の任務入ってましたよね。もう寝ますよ」
口を尖らせるカカシの手を振りほどいて、イルカは立ち上がる。それを恨みがましげにカカシは見上げた。
「イルカ先生のいけずぅ」
「カカシさんの方がイケズです!」
しっしとカカシを追いやって、卓袱台を退けて、押し入れから布団を取り出して、狭い六畳間に二枚並べる。まだちょっとふかふかな新しい布団の上、拗ねた顔でカカシが転がり、電気の紐に指を掛けたイルカを見上げた。…同じモノが付いてる男だろうが、上忍だろうが、ひとつ年上だと言うのに、自分よりもすごく子どもっぽいとか、知ってるはずの常識を知らないだとか、色々とあるけれど、この男のことが好きなのだろう。…まあ、キスしたりとかエッチなことを出来るかは取り敢えず、置いといて…。イルカは電気を消して、隣の煎餅布団に潜り込み、右手をカカシへと差し出した。その手を不思議そうにカカシは見やる。
「…なに?」
「いきなり、き、キスとか、え、エッチなことは俺には無理です。まずは手を繋ぐところから始めましょう」
部屋が暗くて良かった。きっと顔は真っ赤だ。木ノ葉一の業師、泣かせてきた女は星の数な相手に何、生娘みたいなことを言ってるんだろうと思うが、これはもう性分だから仕方がない。暗がりに目が慣れて、じっと差し出した手を凝視しているカカシに呆れられてるのかと思うとイルカは羞恥で死にそうになってきた。
「…い、イヤならイイです!」
手を布団へ引っ込めようとするとガッと手を掴まれ、ひんやりとした指先がイルカの指に絡まった。
「イヤなワケないでショ」
「…っ、あ、は、恥ずかしんで、やっぱり離して、」
「イヤですヨ!」
「カカシさん!」
ぎゅっと強く握り返されて、イルカは焦る。夜目にも解るほど、幸せそうな顔をしたカカシがふんわりと笑んだ。
「俺、気は長い方だし。イルカ先生のペースで全然、いいから。ゆっくり、俺のこと好きになって?」
この上忍様、実に卑怯だ。手を握ったくらいで幸せそうにニコニコされたんじゃ、好きになるしかないじゃないか。
「…っ、善処します。おやすみなさい」
「はい、おやすみなさい」
手を握られて寝返りは打てないので、イルカは無理矢理に顔を背ける。カカシの嬉しそうな忍び笑いが癪に障るけれど、何だか満ち足りた気持ちでイルカは目を閉じた。





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